電子海図情報表示装置の小部屋

電子海図
 電子海図表示システムは英語でElectronic Chart Display & Information Systemと言い略して
ECDIS と呼ばれています。写真は「株式会社トキメック」製の EC-6000S です。
 電子海図表示システムには GPSの自船位置情報や船舶自動識別装置の他船情報、自動操舵
装置のオートパイロット情報、ドップラーソナーの速力情報などが入力されております。
 また、レーダーを作動することにより、電子海図上にレーダー画像をオーバーラップ表示
することもできます。従って、航行中の他船の映像以外にも「衝突監視装置( ARPA ) 」を
設定することにより電子海図上で接近中の船との衝突監視ができます。

 航海用電子海図(Electronic Navigational Chart)は従来の紙海図を素に作られており、CD-
ROMに格納され画面に表示されます。画面の表示範囲の縮小、拡大は自由にでき、全世界
の海域を連続表示することができます。

 上の写真では「自船位置」が画面の海図上に表示されています。また、航行中であれば、
これに針路と速力がベクトルで表示され、自船位置は針路方向に時々刻々と移動して表示さ
れます。海図上の「赤い丸印」は危険な浅瀬などを示し、これをポインターで選択すると、
この詳細がダイアログとして海図上に表示されます。

 上の写真は東京湾の「浦賀水道航路」と「中ノ瀬航路」付近の海図を表示しています。電
子海図では紙海図のように陸上の山の形状を判断するための等高線などは省略され描かれて
いません。船位を知るための方位測定が必要ないためと思われます。

 電子海図の画面上には予定針路線を自由に書込むことができ、ポインターを使い、その修
正も簡単にできます。また、予定針路線にある幅をもたせたルートとして描くこともでき、
このルートから船位が外れると警報装置が作動するようにもできます。

『 Raytheon Marine 社製 レーダー 及び 電子海図表示システム 』

 上の写真はレイセオン社(米国)製のレーダーです。

 上の写真はレイセオン社製の電子海図表示システムです。針路設定や操舵用スティックで
操舵が出来るようになっています。

 上の写真は長崎港に向けて針路 349° 速力 14.9ノットで長崎半島野母崎南方を北上中のも
のです。自船位置から上向きの矢印は進路と速力を表示したベクトル線です。
 また、左上3個の楔状画像は船舶自動識別装置(AIS)の情報画像で進路速力をベクトル
表示しています。

 これは上の写真のデーター表示部を上下に二分したものです。針路や速力、主機回転数、
船首回頭率、舵角、旋回径などはアナログ表示になっています。


『 レーダー画像と電子海図画像の対比 』

 上の写真はレーダー画像です。長崎半島野母崎沖を針路 348° 速力 14.6ノットで航行中の
画像です。他船映像の内、A船、B船、C船から赤い線が延びておりますが、これは衝突監
視装置を起動して、この3隻をターゲットとして表示しているもので、相対進路と相対速力
の12分間のベクトルです。また、A 船とD船の白いベクトル線はAIS情報の進路と速力を表
示しています。なお、E船、F船、G船、H船は AIS 未装備船と思われます。

 上の写真は電子海図の画像で前のレーダー画像と同時刻に撮ったものです。A船、B船、
C船の位置には丸印が付いており、衝突監視装置のターゲット ID 番号が表示されていま
す。また、A船とD船の位置にはAIS の楔状マークが付いておりますが、B船とC船は、これ
が付いておりませんので AIS 未装備船と思われます。
 なお、レーダー画像では、E船、F船、G船、H船は表示されておりましたが、AIS 未装備
船のため、ここでは表示されておりません。

『 電子海図画像とレーダー画像との着岸状況の対比 』

 上2枚の写真は長崎港内において総トン数 40,800トン、重量トン数 75,000トン、全長
228.5メートルのプロダクト・タンカーの着岸状況を電子海図とレーダー画像で対比したも
のです。どちらの画像にも船体の大きさが描かれていますし、電子海図には船体の動きがベ
クトル表示されています。

 上4枚の写真は前の写真から3隻のタグ・ボートを使用して約 90度旋回させたときのも
のです。レーダー画像で船首部分に AIS マークが見られますが、タグ・ボートのものと思わ
れます。

 後進速力 1.4ノットで船尾が岸壁突端に並びました。機関や舵は使用せず、タグ・ボート
だけで操船しています。

 岸壁に平行になり、船首と船尾の係留索を取っているところです。

 着岸が終了しました。この船は貨物油タンク内の全てを今から約2ヶ月間をかけて特殊塗
装工事が行われます。隣の岸壁に係留中の船も特殊塗装工事中の船です。