復原力は船幅(B)が広い船ほど大きく、同一船で横揺れ周期(T)が短いほど大きいこと
が分かります。従って、大きな復原力が必要な船、例えば、タグ・ボート(曳船)などは船の
長さに比べて幅が広く作られています。
しかし、復原力が強すぎると横揺れ周期が短くなり、少しの波でもグラグラと横揺れして乗
り心地が非常に悪くなります。この様に復原力が強すぎる船を軽頭船(Stiff vessel) または、
ボトム・ヘビー( Bottom heavy ) と言います。
ボトム・ヘビーの状態で航行すると、乗り心地が悪いばかりではなく、積荷が移動したり船
内設備を破損する恐れがあります。
復原力が弱すぎると横揺れ周期が長くなり、片舷に傾き始めるとなかなか止まらず、このま
ま転覆するのではないかと不安になることがあります。事実、この様な状態では大きな横波を
受けると転覆するかも知れません。また、横風を受けても大きく傾きます。
この様な復原力が弱すぎる船を重頭船(Tender vessel) または、トップ・ヘビー( Top he
avy)と言います。
復原力はどの程度が良いのでしょうか。船が港を出港して目的地の港に入港するまで何日も
掛かることがあります。その間に燃料や清水、その他を消費しますが燃料タンクや清水タンク
は船の重心より下方にあることが多く、この様な場合は消費が増える程、重心が上昇し、従っ
てGMが減少して復原力は弱くなります。また、冬期寒冷地を航行すると甲板や甲板貨物にし
ぶきが掛かり、これが結氷しても重心が上昇します。
この様に、航行海域の気象や海象、航行距離や自船の性能を考慮して、到着時に十分な復原
力が確保されるよう、出港時に適正なGMで出港します。
一般の船は、空船状態のGMは大きくなるように設計されていますが、満載状態では船幅の
4パーセント(0.04・B)位が適当と言われています。
例えば、総トン数 10.000トン 船幅 20m の船の場合で計算すると
GM = 0.04・20 m = 0.8 m( 80 cm )
T = 0.8B/√GM = 0.8・20/√0.8 ≒ 18 秒
GM は最小でも30cmを限界とし、これ以上を確保すべきと思われます。
尚、20トン未満の小型船(モーターボート等)では船幅の8割を横揺れ周期の秒数とすれ
ば、ほぼ安全範囲と言われています。
( 船幅の8割を横揺れ周期とすれば GM =1m となります。) |