船速距離計の小部屋

ソナー
 船では、速力計を「ログ ( Log ) 」と言います。上の写真は「ドップラー・ソナー・ログ」
です。移動する物体から発射する音は、それが近づいて来るときは音が高くなり、遠ざかる時
は低くなります。例えば、救急車のサイレンの音は、近づいてくる時は高く聞こえ、通過した
瞬間から低く聞こえる様になりますが、この現象を「ドップラー効果」と言います。船底から
船首尾方向に発射され、海底や海水塊に反射されて戻って来た音波を受信し、発信音波と受信
音波の周波数の変化から速力を算出する装置が「ドップラー・ソナー・ログ」なのです。

 ソナー(SONAR)とは、Sound Navigation and Ranging の略です。ソナーは、垂直ソナー
と水平ソナーに分けられます。垂直ソナーは音響測深機や魚群探知機とも言われる事がありま
すが、一般にソナーと言う時は後者の水平ソナーを指しています。ソナーは自船の全周囲又は
扇形角度範囲にわたって放射された超音波が目標物に当って返ってくる反射波を受信して、目
標物の方向と距離を測定するものです。潜水艦などには、欠かせない計器と思います。

 上二枚の写真はJRCの「ドップラー・ソナー表示盤」です。
 左の表示盤では速力15.02ノットで航走中ですが、船首が左に0.72ノット、船尾が同
様に、左に0.79ノットで横移動しています。 しかし、船首と船尾の横移動の速さは殆ど同
じですので、船首尾の針路に変化はなく直進している事が解ります。
 右の表示盤では速力16.43ノットで航走し、船首が左に0.68ノットで、船尾が同じく
左に3.33ノットで横移動しています。 この場合、船首に比べ船尾の横移動速さが大きいの
で船は右に旋回中である事が解ります。
 また、右に旋回中なのに船首が左に横移動している訳は、水に浮いている船が航走中、旋回
すると外側に横滑りしながら旋回するためです。

 上の写真は右旋回中の船尾の航跡を写したものです。船尾が大きく左側に振り出て行く様
子が解ります。

 ログは、昭和30年初期までは「測程儀」と言い、長いロープに一定間隔の印を付け、これを
航行中の船の船尾から流し、一定時間を砂時計で測って、繰出されたロープの長さで速力を測
定したものです。この時代は、これが航海用具の法定備品でした。次には「パテント・ログ」
と言って、長さ100メートル程のロープの先に羽車を付け、船尾に回転積算計を取付けて、船
尾からロープを流し、これを積算計に付け、4時間毎の航海当直交代時に船尾に行き、積算計
の数値を読取り、当直中の航行距離を航海日誌(ログ・ブック)に記載するという方法が行わ
れました。この次の時代は、船底から 1メートル程のピトー管を海中に出し、水圧によって速
力を測定する「圧力・ログ」、船底を流れる海水(流体)が磁力線を切る時に発生する起電力
を検知して速力を測定する「電磁・ログ」となり、現在では「ドップラー・ログ」が主流にな
っています。