船長のサイドはSTBDである、というのは?
ご質問の意味がよく理解できませんが、船長が操舵室(ブリッジ)内で操船指揮をとる場
合、常に操舵室の右舷側に立って指揮するかという意味であれば、そのようなことはありませ
ん。甲板部職員のスタンバイ部署は「投揚錨」では、一般に一等航海士が船首の投揚錨作業の
責任者として船首部署につき、二等航海士と三等航海士はブリッジで船位測定やレーダー監
視、テレグラフ操作などの船長の操船補佐をします。
船長は、海図上の船位確認や自身でレーダーを覗き周囲の状況を確認する場合もありますが
それ以外では、ブリッジ中央前面に備えられた「操船指揮コンパス」付近で操船指揮をとるこ
とが多いようです。
また、「離着岸部署」では、一等航海士が船首部署、二等航海士が船尾部署の責任者で、三
等航海士はブリッジで船長の補佐をします。船長は、パイロットが乗船して操船しているとき
でも船の総責任者としてパイロットの操船の状況を監視しています。
従って、岸壁に接近すればブリッジ・ウイングに出て、岸壁までの距離やタグ・ボートの使
用状況、船首や船尾の係留索の張り具合などの監視をしておりますので、一カ所に立って操船
指揮をとることはありません。
ご質問の「船長のサイドはSTBD」の事ですが「船長室」は確かに殆どの船がブリッジ直
下の右舷側にあります。
この理由は「船で使う特殊な言葉」のページで
「ポート・スターボード」の項を見て頂けば
お解りと思いますが、左舷側を接岸して大勢の仲仕が騒々しく乗降りして、荷物の積降ろしを
するので、左舷を「積込み舷(Lade board)」と呼び、右舷と左舷の上下の席次として左舷を
下位とし、したがって右舷が上位席であり、最高責任者の船長室は右舷にあると言う説です。
なお、初期の頃は上記の通り、左舷を「LADE-BOARD」と呼んで居たそうですが、これが
次第に「LARBOARD」と呼ばれるようになったとの事です。しかし、これでは操舵号令の際
に「STARBOARD」と聞違えることがあり危険なため、左舷を現在のように「PORT」と呼ぶ
ように統一したとのことです。
従って、右舷を上位とする習慣から外国の港に入港する際には、その国の国旗をマストの右
側に掲揚し、自国の国旗は船尾のフラッグ・ポストに掲揚します。
また別の理由として、海上衝突予防法の「横切り船の航法」で他船を右舷側に見る場合で衝
突のおそれがある場合には自船が他船の進路を避けなければならない「避航船」で、他船は現
在の針路と速力を保持しなければならない「保持船」と規定されています。
従って、船は、左舷側の見張りよりも右舷側の見張りの方が重要だとの理由で、昔から船長
室は右舷側にあると言われています。真偽の程は分かりません。
また、海上衝突予防法の「横切り船の航法」で他船を右舷側に見る船が「避航船」で、他船
を左舷側に見る船が「保持船」となる規定が、どのような理由で制定されたのでしょうか。
どなたかご存知の方は教えて下さい。
私の全くの想像ですが
「ポート・スターボード」の項に書いているように、昔のバイキング
船は右舷船尾に大きな「スティアー」が付いておりました。そのため、操舵する操船者には帆
や帆柱などの上部構造物のため左舷側は見え難く、その反対に右舷側から接近する船は十分遠
い距離から視認でき、その船を避航することは容易であったと思われます。
このような理由で、他船を右舷側に見る船が「避航船」で、左舷側に見る船が「保持船」の
規定が出来たのではないでしょうか。どなたか理由をお知りの方は教えて下さい。
ちなみに、2船間の衝突を防止するには、一方が「避航船」の場合は他方を「保持船」にす
る方が、両船に「避航」動作をとらせるよりも衝突の確率が低下すると言われています。 |