大型船のエンジンルームはどのようなものでしょうか。大型船のエンジン・ルーム内には
エンジン・コントロール・ルームがあり、ここでメインエンジンの制御や、発電機、各種ポ
ンプ類の操作など、全ての機械類の遠隔操作ができるようになっています。 |
上の写真は、船橋(ブリッジ)内の「エンジン・コントロール・スタンド」で、右側の写
真でレバーが付いたものを「テレグラフ (Telegraph)」と言います。
このエンジン・コントロール・スタンドで主機関の遠隔制御を行いますが、切換えにより
機関室内のコントロール・ルームでも主機関の遠隔制御ができます。 |
( エンジン・テレグラフのページへどうぞ )
「テレグラフ」のレバー操作で主機関の制御を行います。現在、レバーは[ST] と表示され
ていますが、これは「Stop ( 停止 )」の事です。現在の [ST] の位置から前側に移動すれば
「前進 (Ahead)」で、後ろが「後進 (Astern)」です。前後進共にレバーは段階的に移動し、
第一段が [Dead slow (極微速)] 、第二段が [Slow (微速)] 、第三段が [Half (半速)] 、第四
段が [Full (全速)] となります。 |
上左側の写真は機関室内の機関制御室(Engine Control Room)にある「機関制御コンソー
ル」です。ここで主機関の監視以外に発電機や各種ポンプ、清浄機や造水器、その他の機器類
の監視・記録などが行われます。
右側の写真は機関制御室にある「配電盤」です。1、2、3と表示されているところは3台
ある発電機の「操作パネル」で発電機の始動、停止や監視などは、このパネルで行います。 |
上4枚の写真は「機関制御コンソール」のモニターや主機回転計、各種メーター類です。 |
上2枚の写真は、メイン・エンジンのエンジン・ヘッドです。左側は左舷上から写したもの
で、右側は左舷船尾から写したものです。 |
主 機 関 要 目( MITSUI-MAN B&W D.E. 6S50MC )
シリンダー数 6 シリンダー径 500 m/m ストローク 1910 m/m
連続最大出力 11665 BHP x 127 RPM(8580 KW x 127 RPM)
連続常用出力 10496 BHP x 123 RPM(7720 KW x 123 RPM)
(総トン数 28,550トン 載荷重量トン数 47.000トン) |
上左側の写真は、メイン・エンジンの「燃料噴射ポンプ」です。このエンジンはディーゼル
エンジンですので、ここからシリンダー内に燃料を高圧噴射します。
右側の写真は「過給機(ターボ・チャージャー)」です。過給機はエンジンの出力アップの
ため、空気をシリンダー内に強制注入する装置で、エンジンの排気ガスで排気タービンを回転
させ、これと同軸の吸気タービンで圧縮された空気をシリンダー内に強制注入します。吸気タ
ービンは排気タービンの裏側になっており写真には写っていません。 |
上左側の写真は、「インタークーラー」です。吸気タービンから送られた空気は温度が上昇
し膨張しておりますので、このインタークーラーで冷却収縮させて吸気マニホールドに送り、
吸気マニホールドからシリンダー内に強制注入します。インタークーラー内の空気の冷却には
海水を通して冷却しています。
右側の写真はエンジン最下部のクランク・ケースです。この中にクランクとクランク・シャ
フトがあります。クランクはピストンの上下運動を回転運動に換えるものです。 |
上左側の写真はエンジン左舷中段にある「手動操作ハンドル」です。メイン・エンジンの遠
隔操作ではなく、直接手動操作する場合は、この手動操作ハンドルで行います。昔、遠隔操作
設備になっていない時代には、ここに一等機関士が立ち、船橋からのテレグラフの指示に従っ
てメイン・エンジンの前進回転始動や停止、後進回転始動や停止、回転数の調整などをこのハ
ンドル操作で行っておりました。
右側の写真は手動操作ハンドルの上に設置されている「回転計とテレグラフ表示器」です。 |
上2枚の写真は、左側が予備の「ピストンとピストン・ロッド」が格納されている様子の写
真で、右側は予備の「シリンダー・ライナー」です。2枚とも船尾側から写したものです。
シリンダー・ライナーはシリンダー・ケースの中に取付けられ、ピストンはシリンダー・ラ
イナーの中で上下運動をします。ピストン・ロッドはピストンとクランク・アームとを連結し
クランクを回転させます。 |
上左側の写真は、メイン・エンジン最後尾にある円形の「フライ・ホイール」と、それに連
結された「プロペラー・シャフト」です。
右側の写真はプロペラー・シャフトの最後端です。シャフトはここから「船尾管(スターン
チューブ)」を通って船外に出て、その先端にプロペラーが取付けられます。
なお、このような大型高出力エンジンでは自動車のようなクラッチ装置は無く、船を前進さ
せる場合はエンジンを「前進回転(右回転)」させ、反対に後進させる場合は「後進回転(左
回転)」させます。従って、前進回転から後進回転にする場合はエンジンを一旦停止し、再び
後進回転始動を行います。エンジンとプロペラーはシャフトで直結されています。 |
上左側の写真は船尾管から海水の侵入を防止するための装置で「船尾管封水封油装置」の圧
油装置です。船尾管から海水の侵入を防止するため吃水の水圧に対応した油圧を船尾管とシャ
フトの隙間に掛け、また、この圧油が機関室内に漏れないような装置になっています。
右側の写真はスクリュウ・プロペラーと舵( Rudder )です。このプロペラーは右回転で前
進し、左回転で後進です。通常、右回転で前進の船が一般的で、この様な船を「一軸右回り固
定ピッチ船」と言います。一軸とはシャフトが一本である事を表し、固定ピッチとはプロペラ
ー翼の捩れが固定されているという意味です。 |
左側の写真はエンジン始動用の「高圧エアー・タンク」です。大型高出力のディーゼル・エ
ンジンを始動するときには高圧空気をシリンダー内に吹込み、この高圧空気の力でエンジンを
回転させ、同時にシリンダー内に燃料を噴射してエンジンを始動します。この船では主機関の
始動の他に、発電機の始動にも使用されます。
右側の写真は高圧エアー・タンクに空気を充填するための2台の「コンプレッサー」です。 |
上左側の写真は「燃料清浄機(Fuel Oil Purifier)」です。大型船の高出力低速ディーゼル・
エンジンの燃料には廉価なC重油が使用されます。C重油は常温においては粘度が高くまた、
不純物が多いため、そのままでは燃料として使用できません。燃料清浄機は遠心分離作用で不
純物を取除くと共に、温度を130〜135℃に加熱してA重油と同じ粘度に下げる装置です。
右側の写真は「燃料供給ポンプ(Fuel Oil Supply Pump)」です。 燃料清浄機で加熱清浄さ
れた燃料は、この燃料供給ポンプでメイン・エンジンや発電機に送られます。 |
上2枚の写真は発電機 ( Dynamo engine ) です。この船には3台据付けられています。 |
発 電 機 要 目
原動機 DAIHATSU DIESEL MFG CO.,LTD TYPE 5DK-20
出力 620 HPS x 720 RPM (456 KW x 720 RPM)
ゼネレーター NISHISHIBA TYPE NTAKL
出力 525 KVA x 450 V x 720 RPM |
上2枚の写真は「ボイラー」です。左側の写真はボイラーの上部で、右側がその下部です。
船が航行中はメイン・エンジンの排気ガスをこのボイラーに送り、排気熱で蒸気を作りますが
停泊中はC重油を燃焼させて蒸気を作ります。エンジン・コントロール・ルームで自動制御さ
れています。 |
上左側の写真はボイラーから発生する燃焼ガス(排気ガス)を洗浄冷却して不燃性ガスを作
る「スクラバー(Scrubber)」です。不燃性ガスを「イナート・ガス」と言いますが、タンカ
ーでは貨物油タンクの空積に、このイナート・ガスを充満させタンクの爆発事故を防止してい
ます。イナート・ガス供給用送風機でガスをカーゴー・タンク内に送り込みます。
右側の写真は蒸気を水に変える「復水器(Condenser)」です。船にとって清水は非常に貴
重なものであり、使用済みの蒸気は空気中に放出せず、復水器で清水に変え再利用します。 |
上左側の写真は「油水分離器(Oil Separator)」です。エンジン・ルームの底などには油が
混入したビルジ(溜まり水)が溜まります。油分を含んだ水(ビルジなど)は海洋汚染防止法
により海上投棄は禁止されています。このため油分を含んだビルジなどは油水分離器で油分を
取除き、油分を含まない水だけを海上投棄します。
右側の写真は「消火及びビルジ・ポンプ(Fire & Bilge Pump)」です。火災が発生すればこ
のポンプで海水を送水し消火栓から放水します。また、船に浸水した場合は、このポンプで排
水します。船ではこのポンプ以外にバラスト・ポンプや、甲板洗浄やトイレ洗浄などのため海
水を常時船内循環させる「衛生ポンプ(General Service Pump)」なども消火ポンプとして使
用できます。 |
上左側の写真は「造水器 (Evaporator)」です。船では港を出港する際、飲料水タンクに飲
料清水を積込みますが、積込み量に制限があるため飲用以外に使用する清水は「造水器」で造
ります。飲用以外に使われる清水を「雑用水」と言います。雑用水はボイラー用水やエンジン
の冷却清水、船員の洗面、バス、シャワー、トイレ洗浄などに使用されます。
造水方法は海水を沸騰蒸発させ、その蒸気を冷却して清水が造られます。海水を沸騰させる
ための熱源にはメイン・エンジンの冷却清水(70℃〜80℃)が使われます。また、この温度
で沸騰させるため「海水エジェクター」で内部気圧を真空状態近くにさげています。
この造水器の造水能力は 20トン/Day です。
右側の写真は「雑用水圧力タンク ( Hydraulic Tank)」です。この圧力タンクで気圧を掛け
て雑用水を居住区内各室に洗面、バス、シャワーやトイレ洗浄用水として送られます。従って
この雑用水は蒸留水ですので飲料水としては使用しません。 |
上左側の写真は「船内給湯機」です。この給湯機で雑用水を加熱し居住区内各室のバス・ル
ームやシャワー・ルームに給湯します。
右側の写真は「飲料水圧力タンク」です。この圧力タンクで気圧を掛け、調理室や配膳室の
蛇口や湯沸器などに飲料水が送られます。 |
上左側の写真は「ゴミ焼却機」で、右側の写真は「汚物処理機」です。これらの設備は「海
洋汚染及び海上災害の防止に関する法律」により設置が義務付けられています。 |
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