上の左の写真は「天測暦」と言い、天体測定(天測)のために海上保安庁が毎年発刊してい
る天体の暦に相当するものです。これには、太陽、恒星、惑星、月など、船で天測を行う時に
使われる主な天体の毎日の位置情報が掲載されています。
中央はその中の、昭和63年7月27日の太陽の位置情報です(随分古いものですが)。天
体の位置情報は全て子午線0度(グリニッチ天文台)を基準に決めた、世界時(Universal tim-
e)での値で、「U」が世界時です。「d」は、その世界時の時刻の、太陽の赤緯です。
右は海上保安庁が刊行している「天測計算表」で高度方位角計算表(米村表)や測高度改正
表、中分緯度航法などで使用するトラバース表など各種航法で使用する表が掲載されています
日本の時間は「日本標準時」を使用して居り、これは東経135度の子午線を基準に決めた
時間です。地球は1日(24時間)に、東向きに1回転(360度)自転しますので、1時間
では子午線角度15度回転します。即ち、東経135度の子午線では子午線0度より太陽は9
時間早く回って来ます。従って、日本標準時は世界時より9時間早い事になります。日本標準
時で昼の12時は、世界時ではまだ午前3時です。
それでは例題として、昭和63年7月27日、推定位置 北緯35度30分、東経137度
30分付近で、その日の太陽の最大高度を測り、正確な緯度を測定する事とします。
太陽が最大高度になる時刻は視時(Apparent time)の 12時00分です。
この時刻のグリニッチ視時は経度137度30分、即ち、9時間10分遅い訳ですから、
02時50分です。この時刻の世界時は、視時が 6分29秒遅いので 02時50分に加え、
02時56分29秒です。この世界時の太陽の赤緯は、北緯19度11.1分です。
( U の 2時が N19-11.7 ですから d の p.p. を見れば1時00分が0.6で、
時間が経過する程 d が少なくなりますので、d から減じます。)
この場合、船は日本標準時を使用しているものとして、世界時 02時56分29秒に
9時間を加えると、日本標準時 11時56分29秒 に太陽が最大高度(正中と言う)
になります。
この時、太陽の最大高度を 74度00分に測定したとすれば、
90度ー74度00分=16度00分 16度00分+19度11.1分=35度11.1分
従って、測定緯度は 北緯35度11.1分 となります。
(実際には測高度に高度改正が必要です) |